自賠責と裁判所基準で違う入通院慰謝料の計算方法

交通事故の示談金増額において、非常に重要な要素となるのが「入通院慰謝料」です。一般的に交通事故というと、「慰謝料」というイメージが強いかもしれませんが、一言で慰謝料と言っても、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料など幾つか種類があります。

通常の人身事故で治療が必要になった場合に、加害者側に請求できるのはこの入通院慰謝料のことです。

そもそも「慰謝料」って何?

交通事故における慰謝料とは、交通事故によって被った損害のうち精神的苦痛に対する損害賠償のことで、その中でも入通院慰謝料とは、交通事故で怪我を負ったことによる治療に対する苦痛などを慰謝するための損害賠償のことを言います。

治療費や車両修理費などの場合は、領収書が出るため相手に対する損害賠償金額の算定は比較的容易ですが、慰謝料の場合は精神的苦痛をお金に換算するため、個人のさじ加減ではなく、一定の基準が必要となります。

慰謝料には3つの基準が存在する

慰謝料には実は次の3つの基準が存在しています。

1:自賠責基準

自賠責保険における慰謝料算定基準です。被害者の最低限の救済を目的としている保険のため、その算定基準も必要最低限の非常に低い金額です。

【計算方法】4200円×通院期間

要するに1日あたり4200円の慰謝料として計算をします。なお通院期間とは次のいずれか少ない方の日数をベースとします。

  • 総治療日数:入院日数と通院期間を合算した数値
  • 実通院日数:入院日数と実通院日数の合計を2倍にした数値

仮に通院期間5ヶ月実通院日数40日だった場合、総治療日数は5×30=150です。

実通院日数は40×2=80。

よって、小さい方である80がベースになるため、4200×80=33万6000円

これが入通院慰謝料です。

2:任意保険基準

これは各自動車保険会社が設定している基準で、公にはされていません。なぜなら、これを公表してしまうと、示談交渉の際に相手と駆け引きができなくなってしまうからです。

ただ、交通事故に強い弁護士によると、この任意保険基準も先ほどの自賠責基準とほぼ同水準の非常に低い基準だそうです。

よって、保険会社から入通院慰謝料の提示を受けた場合は、すぐに合意をせずに、次の裁判基準によって再計算して請求することがお勧めです。

3:裁判基準

これは過去の裁判例を基準にして作成されている入通院慰謝料別表によって計算する基準です。

自賠責基準のように、1日あたりいくらという考え方ではなく、通院と入院の期間によって慰謝料額が決定します。

例えば、先ほどの事例のように、通院期間5ヶ月の場合は表に当てはめると105万円の慰謝料が請求できる計算です。

もしも入院期間があるようでしたら、さらに慰謝料は増額します。

このように裁判基準はその他の基準に比べ、実に2倍以上の金額となるため、加害者側と交渉する際には、必ず裁判基準に当てはめて妥当かどうかを判断しましょう。

慰謝料を増額するには、弁護士による「プレッシャー」が不可欠

このように交通事故の慰謝料請求においては、裁判基準を用いて増額請求していくことが重要ですが、ポイントなのはこれを弁護士に依頼するということです。

保険会社側も、ある程度被害者から増額請求されることは織り込み済みで、初回の慰謝料額を提示してきます。これに対し、裁判基準による慰謝料額まで増額するためには、要求に応じない場合は訴訟も躊躇わないという強い姿勢とプレッシャーが重要なのです。

基準は基準であり、あくまで当事者が合意しなければその金額を相手に支払わせることはできません。

万が一応じなければ、訴訟によって払わせるしかありません。保険会社はこのことをわかっていますので、相手が訴訟まで考えているのかどうかを探っています。

仮に裁判外で解決しようとしているようであれば、保険会社としては裁判基準満額まで応じないという姿勢を貫く可能性も出てきます。

保険会社が裁判基準による慰謝料を認めるケースというのは、応じないとほぼ確実に訴えられるというプレッシャーを感じた時なのです。

そしてそのプレッシャーがかけられるのは、ほかならぬ弁護士だけなのです。

ですから、一般の方がこの裁判基準を知ったからといって、それで当然に増額出来る訳ではありません。大切なことは、その基準による慰謝料を弁護士によって請求してもらうことなのです。