交通事故の成年後見申し立て手続きと代行について
交通事故の被害に遭うと、普段の日常生活ではあまり関わることのないような様々な法的手続きが必要となるケースがあります。
そして、その中の1つが「成年後見の申立て」です。では、なぜ交通事故の被害に遭うと成年後見の申立てが必要になるのでしょうか。
今回はこの点と成年後見制度の概要、およびその手続きについて解説します。
交通事故で意識不明の重傷、その時損害賠償請求はどうすればいいのか?
交通事故によって深刻な怪我を負ってしまった場合、被害者本人の意識が戻らず植物人間状態になってしまったり、意識はあっても意思の疎通ができないほどのダメージを受けてしまうことがあります。
このような場合、当然加害者に対して損害賠償請求できるのですが、被害者本人の損害賠償請求権は原則として本人でなければ行使することができません。
けれども被害者本人との意思疎通ができない場合は、代わりの人が本人に代わって加害者に対して損害賠償請求をするしかありません。
普通に考えると、このような場合被害者の家族が当然のように加害者に対して損害賠償請求できるように思いますが、実は法的にはそうはいきません。
被害者の家族が自ら損害賠償請求できるのは、あくまで被害者の家族として被った精神的な損害である慰謝料などであって、被害者本人に生じた損害分については、たとえ家族でも当然に代理して請求することはできないのです。
そこで、このような場合に必要となるのが「成年後見の申立て」の手続きなのです。
被害者の代わりに成年後見人が損害賠償請求をする
成年後見制度とは、正常な判断能力が失われてしまった人に代わって、その人の身の回りの看護をしたり財産を管理するなど、本人が不利益を受けないよう法的に保護するための制度です。
この際、正常な判断能力が失われた方のことを「成年被後見人」、成年被後見人を援助する人のことを「成年後見人」といい、家庭裁判所に成年後見の申立てをして認められることで成立します。
これは、交通事故で意思疎通が困難なほどの障害を負った場合だけでなく、高齢者の方が認知症や痴呆にかかってしまった場合にも利用されています。
交通事故の損害賠償請求においては、意思疎通ができない被害者本人に代わって成年後見人が加害者に対して損害賠償請求を行っていきます。
成年後見人は誰がなるの?
誰が成年後見人となるのかについては、最終的に家庭裁判所が決定しますが、申立てをする際に成年後見人の候補者を記載することができます。通常は本人のご家族か担当する弁護士などの名前を記載します。
成年後見の申立て方法
1:申立て先
成年後見の申立ては家庭裁判所に対して行います。東京都の場合23区および諸島の方は「東京家庭裁判所後見センター」、それ以外の市町村場合は「東京家庭裁判所立川支部後見係」です。
2:申立てできる人
成年後見の申立てができる人は本人のほか、近親者では配偶者、4親等以内の親族です。
ちなみに4親等以内というと「おじ、おば、甥姪、いとこ」、さらにそれらの配偶者側まで広く含まれます。
3:必要書類
- 申立書(家庭裁判所のサイトからダウンロードできます)
- 申立事情説明書
- 親族関係図
- 本人の財産目録およびその資料
- 本人の収支状況報告書など
- 後見人等候補者事情説明書
- 親族の同意書
- 戸籍謄本(本人および後見人等候補者)
- 住民票(本人および後見人等候補者)
- 登記されていないことの証明書(法務局で取得できます)
- 診断書
4:必要費用
成年後見の申立てには以下のような実費がかかります。
- 収入印紙代800円
- 登記費用2600円
- 郵便切手代3200円
成年後見の申立ては一般の方では大変ですので、弁護士に任せましょう
成年後見の申立ては、交通事故における示談交渉と同じくらいの労力を必要とするほど、非常にややこしく難しい手続きです。
必要書類についてもケースに応じて家庭裁判所から様々な書類の提出を要請されますし、場合によっては面接が必要となることもあります。
交通事故でただでさえ疲弊しているところに、そんな面倒な手続きが関わってくると、被害者のご家族からしたらとても手に負えないでしょう。
そのため、成年後見の申立て手続きについては、プロである弁護士に任せることをお勧めします。交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すれば、成年後見の申立てについても合わせて対応してくれるはずです。
ご自身で無理をすると、損害賠償請求がスムーズに進まなくなる恐れがありますので、成年後見の申立ては弁護士に任せましょう。